社員インタビュー@

佐々木 伸治

2005年入社

ものの何秒で勝負がつく

市場と言えば、誰もが思い浮かべる「せり」の風景。あれも私の仕事の一部。時には、生産者の方が1年かけて大切に育てた果物をものの何秒かで売ってしまいます。けれど、生産者の苦労も、努力も知っている。農協を通すケースが多いですが、だからこそ、農協にも、生産者にも儲かってもらい、それを買ってくれる仲卸の人たちにも「いい買い物をした」と思ってもらう、そして我々もしっかりと儲けさせてもらう、これが我々の商売ですね。

“個人商店”のようなオモシロさ

しかし、その仕組みはどこか個人商店のようなところがあります。つまり、良いものを安く仕入れ、高く売りたいとなる。けれど、いつも同じ品質、同じ量が確保できないのが青果物の定め。自分のところを大事にしてもらうには、生産者も農協も仲卸も大事にしないと、それらの人からそっぽ向かれたんじゃ、商売ができなくなる。結局は、誰もが納得できる値段が付くこと、この微妙な調整ができた時、達成感を得られるのかな。

市場には“人情”が渦巻いている

誰も損をしないことが一番だけど、そうもいかない。うちが損をしてでも生産者を守ることがあれば、数が揃わず、無理を言って生産者や農協に出荷してもらうこともある。仲卸の人もそう。値段や数の面でこちらが無理を言うこともあれば、今度特売をするとか、イベントがあると聞けば、こちらも協力する。そこにはお互いに、「あんたやけん」という、もの言わぬ信頼関係がある。相手の事情を含めた情報や品物、産地の知識、また仲卸の情報や状況、こういった目には見えないところこそ、じつは値段を動かしているということ、経験とともにわかってきました。

いつものクセがついつい

セリの時、数や値段はほとんど指で示します。つまり言葉にかわって指で喋る。それも、普通指で数えるのとは違う数え方。このクセがプライベートでもついつい出てしまう。「これを3つ」とか『3人』とか、セリの時のように指を立ててしまうと、親しい相手でもわからない時があります。「あっ」と思うんだけど、体で覚えてしまっているもんだから、これが治らない。この仕事につかなかったら絶対に出ないクセですよね。(笑)


社員インタビューA

片岡 淳一

2007年入社

緑から黄色へ、バナナの加工も大事な仕事

そもそも黄色く熟したバナナは輸入できず、日本に輸入されるものは皆緑色の未熟なバナナです。ではなぜ、店頭のバナナが黄色く、美味しそうに熟しているかというと、商社や、私たちのような加工設備を持つところが黄色く熟させて(追熟加工)販売しているからなのです。緑色のバナナを見た目だけではなく、美味しく、棚持ちもよく、欲しいと言ってもらえるバナナに仕上げるのも僕の仕事なんです。

海外のニュースが直結することも

バナナはほとんどが輸入で、そのうちの8割がフィリピン、あとはアメリカ、中東、オーストラリアといったところ。店先に並ぶのは、1か月前に注文した物で、産地で収穫した物を船で運び、荷受けした物を加工して出荷します。つまり、天候や最近では内戦があったとか、国内情勢で輸出できなくなったとか、産地だけではなく、いろんな国の情勢と深くかかわるので、ネットのニュースや商社との情報交換は欠かせません。

先を読む仕事

1年中、どこの店先にも並ぶのがバナナ。しかし、今日ほしいと言っても産地は遠く、おまけに加工も必要。でも、それを可能にしているのは、需要を見越して、前もって注文されているから。1年中あるとはいえ、ニーズには大きな変動があります。気候やシーズンの特徴、地域やお店によっても、バナナの種類や売れ行きに大きな差があります。「欲しい」と言われたときにはその数が用意できている、相手のニーズや先を見越した読みもとても重要なんです。

バナナを“提案”する

バナナだったら何でもいいという時代はとっくに終わってます。値段や産地はもちろん、甘みも、その甘みの質も、安全性も、お客様がバナナを選ぶ基準はいろいろです。新しいニーズを開拓できるようなバナナの特殊加工もこれからやっていきたいですね。バナナに合わせてトロピカルフルーツの輸入もされているので、こういった商品の紹介や提案もやりがいがあると思います。この会社の中ではある意味特殊な部署だけに、自分のアイデアや技術で売り上げを伸ばせる面白さがあります。


社員インタビューB

長尾 賢

2009年入社

市場でバイト

前の職場を辞め、次を探す間に、父が農協に勤めた関係もあって市場でバイトの仕事を始めたんです。夕方6時くらいから明け方の4時まで、運ばれてきた荷物を所定の場所に時間内に振り分ける作業。つまり、セリまでの準備だからセリの様子を見ることはなかった。24時間眠らない市場ならではの仕事だけど、思えば、今やっていることとは全く別の仕事でしたね。それでも大切なのは、段取りや要領。時間内にきっちりケリが付けば気持ちもよかった。しばらく働いていると、「やる気があるなら正社員にならないか」と言ってもらって入社しました。

言いにくいことも言う

長さを揃える、袋詰めの仕方、たったこれだけのことでも、セリにかけると値段が違う。農協さんも生産者さんも大切なお客さんだから、本当は言いにくい。だけどそれだけの工夫で値段が高くなる。市場は、他の産地や生産者との差が一目瞭然になる場所でもある。高く売れたほうがいいという思いは一緒だからこそ、悪かった所、値段が下がる原因になったことはきちんと伝えることが大事なんですね。自分らよりはるかに年上の生産者でもね。

それは、“値段”で返す

仲卸さんも大事、でも生産者が第一のお客さん、それが私の考え方です。うちの仕事は、とにかく出荷してもらわないと話にならないわけですから。産地会議に出向いた時は、農協さんをはじめ、生産者さんとの懇親会があり、夜、一緒に飲みながら話ができる。すると、市場で品物が並ぶ時にも、その人の顔が見えてくる。顔が見えてくるようになるから、その人の代わりにここで値段をつけていると思える。365日働き、日々勉強、そんな生産者の努力に報いるのはやっぱ値段でしかないんやなぁ。

売り切った達成感

近頃の値動き、今日の入荷量、質、そんな所から「今日はこれくらいの値段に近づけたい」と目安を持つ。ところが、なぜか仲卸の手が全く上がらない、そんな日もあります。1分かかるかかからないセリの状況ので、とっさに空気を読み、流れを作り、値段にどう持っていくかを判断する。それは自分にしかできない仕事。そんなものがピシャリ的中し、担当したものを全部売り切った時は爽快です。しかし、自分がそこで何を言って、どうさばいていったか、じつはほとんど覚えていないんです。(笑)